「ソングラインを旅する」 Powered By ETC [ 英会話プライベートレッスン ]

 

ブルース・チャトウィンふとしたきっかけで、ある人のことが心に残り、その人のことを深く知りたくなることがあります。

彼らがどう死んでいったのかというエピソードは、彼らがどう生きていたのかという興味に変わり、彼らが愛した場所を訪ね、彼らが旅をした風景を見て、彼らの息遣いに自分自身の呼吸を重ね合わせ、彼らの心を感じてみたくなるのです。この世に遺して行っていった彼らの想いがそうさせているのかもしれない、とさえ思うことがあります。

そして、僕は今ブルース・チャトウインという人に出会ってしまったのです。

僕は彼の遺作である『Songlines』を、原書(翻訳本は絶版)で読んでいくことにしました。 日本語訳をサポートしてくれるのは、ETCが紹介してくれたヘルナンデス先生。

他界する二年前に、ブルースが旅したオーストラリア。彼が『Songlines』に書き残してくれた足跡を、僕が辿って行く。 その過程をここに書き溜めて行きます。

 

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2006年06月12日

ロシアの湯沸し

Russian family with samovar

 ETCで英会話のプライベートレッスンを始めたのは、20年ほど前。当時使っ
ていたのは、ロングマンの英英辞典。これが厚さ10cm、重さは数キロはある
巨大な本で、毎週カバンに詰めて、先生の自宅に通っていました。その後、
電子辞書に取って代わり、ずっと軽量に。

 そして現在、英文を読む時にはパソコン(インターネット)が欠かせなくなっ
てきています。

 先週のレッスンでは、こんな部分を読みました。

 オーストラリアに移住したロシア人のアルカディの父は、砂漠のようなア
デレードでの生活が辛くなり、やがて健康も害してしまいます。父のことを
心配したアルカディの兄は父と共に、十数年ぶりに故郷のゴルニャツキーへ
帰ります。

 父は、故郷の小麦畑、白樺の林、ゆっくりと流れる川、そしてthe old samovar
を見て、懐かしい気持ちでいっぱいになります。

 さて、この

  samovar

 がわかりませんでした。早速、gooの英和辞書で調べてみました。


 すると、

  サモワール (ロシアの湯沸し).

 とありました。


 「なるほど、やかんのようなものか」程度のことは、わかりました。が、
samovarが一体どんな形をしたものなのか、なぜ、アルカディの父が、ただ
の「やかん」を、懐かしい気持ちで見ていたのかを感じることはできませんで
した。
 
 そこで使ってみたのが、google のイメージ検索です。
 すると、どうでしょう。沢山のsamovarの画像が表示されたのです。


 googleのイメージ検索の結果画面


 ただの「やかん」ではありませんでしたね。とても趣のある形状をしてい
ます。samovarを囲んで、家族や友人達が、湧き上がる湯気を見つめながら、
楽しげにお茶を飲んでいた、そんなゆったりとした時間が流れる様子が目に
浮かぶようです。


 インターネットのおかげで、僕は「samovar」がどんな形状をしているのか
を知ることができました。おそらく、かつての様に英英辞典を眺めていても、
決してわからなかったでしょう。単語を調べる時間も短縮されました。

 でも、単語検索の時間が短縮され、スピードがアップした僕の生活は、
果たして豊かになったのでしょうか。短時間で「samovar」を調べることがで
きた僕が、その一方で失ったものはなんでしょう。物事は全ては陰と陽でき
ているとすれば、何かを得たときは、その一方で必ず何かを失っているはず
です。


 たとえば…

 インターネットが無かった時代に、僕はどんなふうにして「samovar」のこ
とを知ろうとしたでしょう。

 おそらく、偶然話しをする機会に恵まれたロシア人に、「チャンス!」と
言わんばかりに、質問攻めにしていたかもしれません。


 「ところで、samovarってどんな形をしているんですか?」
 「どんなふうにお湯を沸かすんですか?」
 「どんな時に使うんですか?」


そして、どうも口頭では説明しきれないと感じたこのロシア人は、

 「良かったら今度家にこないか。samovarでお茶でも入れてあげるよ」

みたいな展開になったかも。(笑)

 そして、僕は、samovarがきっかけで知り合ったロシア人の友人が一人でき
ていたかもしれません。


 インターネットで僕たちが獲得できたもの。インターネットが突然使えなくなっ
た時に、僕たちが直面する不安、混乱。インターネットの便利さを享受する
その一方で、もしかしたら失ってしまっているかもしれないもの。

 samovarで沸かすお湯の音。

 湯気の香り。

 ゆっくりと流れる心地よい時間。


 失ってしまいそうなもの。

 それは、妄想(?)、いや想像する楽しさかな?

Links

SONGLINES』はETCからご紹介いただいたHernandez先生(渋谷区外苑前)と一緒に読み進めています。