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2006年10月 アーカイブ

2006年10月01日

ハイレ・セラシエを思い浮かべながら

チャットウインの文章をじっくりと読むと、彼が登場人物に好意を寄せてい
るのか、それとも嫌悪を感じているのかがわかってきます。

その人に対して、心から共鳴しているのか、それとも強い反感を持っている
のか、必ずそのどちらかで、どちらでもないという人はいないようです。
もちろん、「好き」とか「嫌い」とか、直接的な言葉は使われていませんが、
彼のさりげなくでも丁寧な描写を読み進めるうちに、いつの間にかぼくも
チャットウインの「好み」に共感してしまっているようです。

ミドル・ボア駅に向かう途中、アルカディは、アボリジニの居住区にアラン
を探しに行きます。どうしても彼をこの旅に連れて行きたいようです。
アランはキャンプ地の奥から、ゆっくりと現れます。

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'Reminds me of Haile Selassie,' I said as we walked away.

 「ハイレ・セラシエを思い出すよ」、歩きながら、僕はそういった。

                  『ソングライン』(96ページ)
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僕はハイレ・セラシエという人を全く知りませんでした。早速、ウイキペディ
アで調べてみました。

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ハイレ・セラシエ(Haile Selassie, 1892年7月23日 - 1975年8月27日)エチ
オピア最後の皇帝。

1916年のクーデターで実権を握り1930年即位。1936年~1941年、エチオピア
がイタリアに占領されていた期間は英国に亡命。1974年に陸軍のクーデター
で逮捕・廃位され、拘禁中の1975年に死去。

1916年ジャマイカの牧師マーカス・ガーヴィーが「黒人の王が即位する時の
アフリカを見よ。その人こそ救世主となるだろう」と予言したため、その14
年後に即位したハイレ・セラシエは中南米の黒人たちから自分たちをアフリ
カに帰してくれる救世主として崇められるようになった。ハイレ・セラシエ
は即位前の名をラス・タファリ・マッコウネンといい、この名前をとって崇
拝者たちのことをラスタファリアンと呼ぶ。

ハイレ・セラシエ1世はジャマイカを中心とする黒人運動、ラスタファリズム
において、神(ジャー)の化身であり、地上における三位一体の一部である
と信じられている。

                      ウイキペディアより抜粋
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ブルースが、アランからハイレ・セラシエを連想したのは、単に褐色の肌、
針金のように硬い白髪交じり髭という外見からだけでなく、アランからも神
の化身のようなオーラを感じていたのではないでしょうか。

そう思って読んでみると、ブルースと同様にこのアランという人を知りたく
なってきました。

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'Reminds me of Haile Selassie,' I said as we walked away.
'But grander.'
'Much grander,' I agreed. 'He will come, won't he?"

 「ハイレ・セラシエを思い出すよ」、歩きながら、僕はそういった。
 「いや、それよりもっと威厳があるよ」
 「その通りだね」、僕は同意した。「彼も一緒に来るんだろう?」

                  『ソングライン』(96ページ)
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一緒に旅をすることになったアラン。ハイレ・セラシエのこの写真を思い浮
かべながら読み進めることにしました。

2006年10月03日

大陸縦断電線とアボリジニ

Alice_Springs_telegraph_station

1860年代の終わり、南オーストラリア郵政長官であったチャールズ・トッド
がアデレードとダーウィン間に電信線を設置することを提唱。
1872年に大陸縦断電信線(オーヴァーランド・テレグラフ・ライン)が完成。
電信線が南オーストラリアのポート・アガスタから、ノーザンテリトリー
のポート・ダーウィンまで、約2900km間に建設されたそうです。

日本列島の南西諸島を除いた長さが約3000km。ほぼ一緒ですね。

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The Kaitiji, Arkady told me, had had the misfortune to live along
the route of the Over Telegraph Line and so came early into contact
with the white man. They also learned to make knives and spear-points
form the glass-conductors, and , to put a stop to this practice, it
was thought necessary to teach them a lesson. The Kaitiji took
revenge on their murderers.

Earlier in the afternoon we had passed on the roadside the grave of
the telegraph operator who, in 1874, dying of a spear-thrust,
succeeded in tapping out a farewell message to his wife in
Adelaide.The police reprisals dragged on until the 1902s.

Alan, as a young man, had seen his farther and brothers gunned down.

'And you say he's the last one left?'
'Of his clan,' he said. 'In this stretch of country.'

 カイティジは不幸にもオーヴァーランド・テレグラフ・ラインの建設ルー
ト沿いに住んでいたため、早くから白人と接触することとなった。また、彼
らはガラス加工の指導者からナイフや槍の作り方を学び、その正しい使い方
を教え込まれること無く、それは終了した。カイティジは彼らの仲間を殺し
た白人に対して復習をはじめた。

 その日の昼過ぎに、僕たちは道路脇にあった電話オペレーターの墓の前を
通った。1874年、槍で一突きされたことにより死亡していた。彼の妻はアデ
レードを去ることになった。警察は1920年代まで賠償金を延長した。

 若き日のアランは、彼の兄弟が銃弾で倒れるのを見てきていた。

 「そして、彼だけが最後に生き残った?」
 「そう、彼の家系の中で。この国の中で、たった一人。」

                   『ソングライン』(96ページ)
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大陸縦断電線建設の影で、一族を失ってしまったアラン。
そんなエピソードが紹介されていました。

2006年10月04日

疲れ切った威厳

堕落論

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'Billy Boy Mob's country,' said Mavis, rousing herself with
exhausted dignity, as though defining her right to eixist.

                     『Songlines』(88ページ)
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 この意味がわかりませんでした。

 'exhasusted diginty'

 直訳すると「疲れ切った威厳」かな。もしくは「使い古された面目」。

 わからなかった理由は、僕の"威厳"という言葉に対する先入観でした。

 威厳とは、力に満ち人を圧倒するもの。それが疲れ切っているなんて変だ、
という先入観です。

 でも、ヘルナンデス先生の説明を聞いて納得。

 こんな感じの訳になるかな?

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 「ビリー・ボーイ・モブの故郷なのよ」とマーヴィスは言った。

 まるで彼女の存在意義を示すために、威厳ある態度で自分自身を奮い立た
 せようとしながら。しかし、そうし続けることの疲れを隠すことができずにいた。
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 ブルースに見抜いていたんでしょうね。マービスが、自分が重要な人物で
あるかのように振舞っても、それは、本当の自分以上に自分を見せようとし
ているだけで。そして、そうし続けていることに彼女自身がが疲れてしまっ
ていることを。

 "exhasusted"(疲れ切った)と "diginty"(威厳)。一見、相反する言葉に思
えますが、それらを繋げることで、実は物事の本当の姿が見えてくる。また、
表現されている内容の幅が広がり、読む人の想像力を掻き立ててくれるのだ
とも思いました。

 では、これに類する表現が作れないかと考えてみましたが、なかなかできず
にいます。それは、僕が物事の姿を見抜けていないからかもしれませんね。


 最近やっと見つけた表現に、こんなのがありました。


 - 悲しき熱帯 - (レヴィ=ストロースの著作)

  熱帯が悲しいのとはいったいどういうことなんでしょう。
  その背景にある物語を知りたくなりますね。


 - (戦争中の日本は嘘のような理想郷で)、
   ただ虚しい美しさが咲きあふれていた。- (『堕落論』 坂口安吾の著作)


  "虚しい美しさ"
  これはいったいどんな言葉で置き換えることができるのでしょう。


  言葉の持つ深さに、どんどんとはまって行きます。
 

2006年10月06日

お勧め!Googleイメージで英単語検索

 皆さんは、もうすでに使っているんですか?

 どうしてもわからない英単語は、Googleイメージで検索。単語の意味をイメー
ジ画像で調べる方法。前にも書きましたが、これってやっぱり便利ですよ。

 「えっ、それってどういうこと?」というあなた。

 または、

 「そんなの常識。だけど、君のその感動を共有してもいいよ」
というあなた。

 どうぞ、この先をお読みください。

 
 たとえは、『ソングライン』でオーストラリアの砂漠を旅する間に、著者
が何度も登場させる植物

 "Spinifex"

 辞書には載ってなくて、Wikipediaで見つけた説明は

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- Spinifex is any species of grass, perennial Australian grasses,
growing in arid regions and having awl-shaped, pointed leaves.

  一年中生育するオーストラリア特有の草
  砂漠地で育ち、きりのような尖った葉を持つ
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とのことです。

 なんとなく、わかったような、わからないような。


 で、これをGoogleイメージで検索するんです。

 すると、こんな感じ。

spinifex2.jpg

 「あーっ、これか」と思いました。オーストラリアの赤い大地のなかに、
ぽつり、ぽつりと、こんな草が生えている情景が思い浮かびました。

 
 では、これはどうでしょう。

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 The sun was touching the trreetops when we came to a wind-pump
 and some abandonded stock-pens.

 太陽が木々の頭に差し掛かった頃、僕たちは"wind-pump"と、もう使用
 されていない"stock-pens"にたどりついた。
                             『Songlines』(103ページ)
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 "wind-pump"も、"stock-pens"も、辞書に無いのです。


 ここで、Googleイメージ。

 "wind-pump"は、これ。、

windpump2.jpg


 "stock-pens"は、こんなかんじ。

stockpens.jpg

 
 車から降り、風車を見上げ、この塀の前まで歩いてきたブルースとアルカディの二人の
背中が、赤い夕日で照らされていた。そんな情景が浮かびました。
 

 Googleイメージで英単語、おすすめです!

2006年10月10日

池澤夏樹さんとブルース・チャトウィン

池澤夏樹さんが、『ブルース・チャトウィンを紹介する』というタイトルで、
書評を書かれています。

http://www.impala.jp/bookclub/html/dinfo/10118608.html

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書評の基本姿勢はいい本を見つけて広めることだ。とてもおもしろいのに世
間はまだ知らないというのがもっとも広め甲斐がある。

                            池澤夏樹
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その通り。池澤さん、気が合います。

しかし、改めて思うと、チャトウィンの作品は10作にも満たないんですね。

Links

SONGLINES』はETCからご紹介いただいたHernandez先生(渋谷区外苑前)と一緒に読み進めています。